残る暑さ、残る可能性【Review】第32節 東京ヴェルディ戦

残る暑さ、残る可能性【Review】第32節 東京ヴェルディ戦

まず始めに触れておきたいこととして、選手入場時Nスタンドには台風15号で大きな被害に見舞われた千葉の方々へのメッセージ幕が掲出されました。
試合の翌日にはF.A.N.Sの方が支援物資を千葉まで届けてくれたそうですが、とにかく、1日も早い復旧が成されることと、被害に遭われた方々が普通の生活ができるようになることを心から願っています。

今節のレビューへ移ります。
両チームの監督が試合後に「ある程度想定内」「プラン通り」という言葉を使うようなゲームだったということで非常に興味深い試合でした。
だからこそなのか、単純にヴェルディの動きを追うのが大変だったからなのかは分かりませんが、あっという間の90分で、前半は特にあっという間な感じがしました。
すごく面白い試合ではありましたが、非常に痛いドローです。

スタメン

カウエが出場停止から復帰した新潟ですが、スタートは前節と同じメンバーを選択しました。正直善朗のボランチ起用はもったいない気がしないわけでもないのですが、それは前節の彼のプレーがイマイチだったという話では全くありません。ボランチの位置において彼のインテリジェンスが活きていたことは事実だったので、メンバー継続は妥当だと思っています。
ただ単純に、やっぱり本職である1つ前の方がもっと活きるなと感じただけです。

対するヴェルディは前節脳震盪で交代した森田が欠場。代わりに入ったのは古巣対戦の佐藤優平でした。
ギャリー・ジョン・ホワイト前監督時代は攻撃の中心として活躍しながらも、永井監督になってからは出場機会が減っていたのでプレビューの予想には入れていませんでしたが、どうやら負傷もあってここ数試合は外れていたようです。

前半

ヴェルディはスタートの立ち位置だけで言うと3バックのようでした。
山本、近藤、内田の3CB、佐藤がアンカーで、クレビーニョはボランチというかインサイドハーフというか、とにかく内側にポジションを取っていました。ただ、予想通りボールを動かす中でポジションは流動的になり、時間の経過とともに次第にクレビーニョが右SBで山本がインサイドハーフの予想図のような4-3-3っぽい形で落ち着きついていったように見えます。
ちなみに開始のたった1分間でクレビーニョと山本は2,3回ポジションを入れ替えており、早々から永井ヴェルディらしさが出ていたと表現してもいいかもしれません。
チームの中である程度固定した位置でプレーしていたのはビルドアップの始点となるCBの内田、近藤とアンカーの佐藤。そして両サイドに張って新潟の守備を広げる役割の井上とパライバくらいでした。また、そのパライバもこの試合は左サイドからスタートしていました。
ちなみにこの配置についてFM-PORT中継の解説だった平澤大輔さんが

(パライバを左に置いて)フランシスが押し下げられることで新潟のカウンターを減らされている

と説明されていました。
また、守備の際は予想通りパライバとレアンドロが前線に残り、井上が右SHに降りる形で4-4-2の形に変化させていました。

新潟は裏を狙う形を中心に試合へ入りますが、あんまりうまくいきません。加えて、マイボールで落ち着いてもヴェルディの素早い切り替えによって作られる4-4-2のブロックを前に手詰まりになっていました。
こうしてボールは序盤からヴェルディが圧倒的に保持する展開となり、8分、11分とヴェルディが左サイドからの崩しで深い位置へ抜け出すシーンを作りますが、それぞれサチローと新井がしっかり付いて行ってやらせません。
この場面を筆頭に守備面では新潟も非常に集中したプレーを見せていました。

16分、18分と新潟はインターセプトから縦に入りながらもスピードが上がらずチャンスを作り切れない場面が続きますが、それならばと20分のシルビーニョのミドルと23分の新太が打ち切れなかったシーンのように、高い位置からの守備で攻撃の形を作ります。
また、シルビーニョのミドルの直後にパライバと井上が左右を入れ替えましたが、その直後にパライバが移った右サイドで山本とクレビーニョが中盤でポジションが重なってしまった隙をサチローが見逃さず、サイドへ飛び出したシーンなんかも含めて、積極的なアクションによってこの辺の時間帯は新潟のペースになりかけていたように感じました。
しかし、ボールを保持しているのはヴェルディであることに変わりはなく、30分以降ヴェルディが再び盛り返します。
31分、左サイドの井上が粘って中央のレアンドロへ渡すと、右サイドに開いていたパライバへ展開。見事なタッチでDFを抜いてマイナスのボールをクレビーニョがシュートを放ちますが、大谷のナイスセーブ。
さらに35分には、梶川、クレビーニョ、レアンドロと中盤でうまく間に入って受けながら運ぶと、右の山本へ展開して再びパライバへボールが渡ります。パライバは少し仕掛けてから中央のレアンドロとワンツーで抜け出しかけますが、ここは大武、サチロー、そして必死に戻ったゴメスによってシュートを力のないものにさせます。
それでもDAZN解説の勲さんが「レアンドロが(ボールを)受けることが出来てきた」と仰っていたように少しずつパライバとレアンドロの絡みでゴール前へ迫られる回数は増えていました。

終盤にもまた、井上とパライバを入れ替えてやっていましたが、変わらずに対応しながら前半終了。0-0で折り返します。

後半

後半もとりあえず最初にヴェルディの大体の並びだけ確認しておきます。
4-3-3はそのままで、3トップのワイドはパライバが右、井上が左。そして右SBに山本、中盤の右インサイドハーフにクレビーニョで、守備の際はクレビーニョが右SHへズレて、井上が左SHへ下がる4-4-2の形でした。
恐らく、山本とクレビーニョの上下を替えた配置は前半20分頃にパライバと井上の左右を入れ替えたあたりからそうなっていたかと思われます。

後半の入りも前半同様、新潟はシンプルに裏を狙う意識が明確でした。大武から新太(オフサイド)、善朗からフランシス(上福元との接触)など、決して悪くない関係性も見られ、たぶんヴェルディベンチからだとは思いますが、「相手がオン(蹴れる状態)の時もう少し早くライン下げろ!」という声が中継マイクにも入っていました。

しかし、落ち着いて入れたかなと思った矢先、フランシスと上福元の接触でしばらく止まってから再開して1分も経たない内にやられてしまいます。
近藤の縦パスをレアンドロがフリックで流すと、抜け出したクレビーニョをエリア内でゴメスが後ろから倒してしまいPK。
このPKをレアンドロにきっちり決められてしまいました。
レアンドロに大武が出て行ったことで空いてしまったスペースをクレビーニョにうまく使われたわけですが、後ろでボールを動かしている間にレアンドロは2回、その生まれるであろうスペースを確認していて、まさに“してやられた”という感じのプレーでした。

それでもアイシテルニイガタのチャントと共に新潟は巻き返します。
57分にはシルビーニョがインターセプトの流れで自ら持ち込んでミドルを放つシーンがあり、さらに55分を過ぎたくらいからは、ゴメスの縦パスに新太が抜け出して深い位置で起点を作るシーンを連続で作ってゴールへ迫ります。
この、新潟から見て左サイドでの攻防を見て両チームともベンチが動きました。
新潟は新太→至恩。ヴェルディは山本→小池。
新潟はこじ開けに行き、ヴェルディは手当てを施します。

しばらく一進一退。
新潟はフランシスのミドルや、カウンターから善朗のミドルでゴールを狙いに行きますが枠を捉えられません。
逆に平澤さんは懸念点として

全体がオープンになっているせいもあるんですけど、前線2人の守備が前半に比べると遅れ気味になってきている

という話をされていました。69分にはセットプレーから近藤のヘッドで肝を冷やされます。それでもここを大谷がファインセーブで救ってくれると歓喜が待っていました。

74分、中央からサチローがスルスルっと運んで左の至恩へ渡すと、得意の仕掛けで縦へ突破してクロス。サチローが粘ってマイナスのボールを新井がシュートを放ちますがDFにあたりCKになります。
これで得た左CKはクリアされますがレオが粘ってもう1度CKを得ると、両チーム1人ずつ交代(フランシス→貴章、クレビーニョ→河野)を挟んでからの右CK。善朗のボールにあわせたのはシルビーニョ!同点!
ピッチサイドコメンテーターの松村さんからもあった通り、パパのゴールを待ち望んでいた娘さんも大いに喜んでいるであろうシルビーニョの来日初ゴールで追いつきました。
サチローの運び、至恩の仕掛け、レオの頑張り、善朗のボール、舞行龍のニアへの走り、そしてシルビーニョのヘッド。ゴールへと結実しました。

最終盤、新潟は2つの決定機を迎えます。
89分カウンター。左サイドから至恩が一気に持ち込んでカットインからラストパス。サチローがスルーをして後ろでもらった貴章がシュートもGKキャッチ。
さらにアディッショナルタイム+4分にもカウンター。
サチローのスルーパスにシルビーニョが抜け出して平行のパス。
足をつったような仕草を見せていた善朗に代わり途中から入っていたカウエがワンタッチでシュートを狙いますが、丁寧にいきすぎたか、ボールはGKの正面に飛んでしまいました。

試合終了、1-1。
あと1歩、勝ち点3奪うには至らず。痛いドローとなりました。

前線の献身

引き分けですから勝因も敗因もないので、何をどうまとめるか難しかったのですが、まずは前節との比較として前線の2人、レオとシルビーニョの守備の意識はこの試合において非常にポジティブな部分でした。
平澤さんも試合中何度も彼らの守備を褒めるシーンがありましたが、ワンサイドを切ることもそうですし、プレスバックもそう、また、前節失点の原因としてもレビューに書いた、前から追えない上に2人が明確な意図が見えづらいまま縦関係になってしまって、その横から簡単に運ばれるという事もこの日はなく、どちらかが出れば中を締める、もしくは次を狙うように動き、追えない時はグッと下がってブロックの最前線としてコースを消してくれていました。
後半にちょっと苦しい時間があったことは先にも書きましたが、それでもラストになって再びギアを上げ直して最後まで前から追ってくれてもいましたし、実際最後のカウンターのチャンスもシルビーニョの守備から始まっていました。
前線の守備を簡単だなんて言うつもりは一切ありませんし、とてもじゃないですがそんなこと言えません。ただ、サッカーの中で他にも様々ある各々のポジションに課せられた作業に比べると、この作業自体は“大変”なことではないのかもしれません。ただFWの選手として“面倒”なことであることは間違いない中で、それをしっかりやってくれたことが90分を通してある程度守備の集中が持続した一因なのかなと思います。

釣り出されない

前線の守備について書きましたが、当然後ろの選手が果たした役割も忘れてはいけません。特にCBのポジショニングは非常に意識されていることを感じました。
ピッチサイドコメンテーターの松村さんも試合中に「今週の守備の練習ではどんなにピンチになってもCBが真ん中にいることを強調された」ということを紹介されていました。この意識は強く感じられることができました。
特に大武は、決してスピードがあるタイプではないだけに早めに潰しておこうとして中央から離れる傾向がありましたが、この日は出るのを我慢して待ちながら対応しているシーンがいくつか見られました。

ちなみに下がって受けるレアンドロへの対応が前半は割り切りながらうまく守れていたのに、後半少しタフに行くようになったという変化がどういう理由が考えられるか気になって、いつもこのレビューでフォーメーションや図を作っていただいているサイトーさんに意見を伺ってみると

後半早々に点を取られたこともあるしスペースもあるしそこまで持たせたくない。さらには楔が結構長いから大武としてもチャレンジしたんじゃないかな?
との返答を頂き気付きが深まりました。
後半すぐにやられたからというのは多少思い至ったのですが、楔の距離の長さによる影響というのは見落としていて、思わずなるほど!と納得しました。
改めてサッカーって難しくて面白いと思わずにはいられません。

もう1人

試合後のコメントで吉永さんは前半の戦いについて悪くない、想定内としながらも「もう少し攻撃する時間を作りたかったのは本音ですけど」ということを仰っていました。さらに後半最後の決定機2つも「決めないと勝てない」と仰っていましたが、攻撃の方で課題が多かったのは確かかなと思います。

まずは試合中平澤さんがご指摘されていた、

ボールに対してパスコースに入る人数、もう1人増えるともうちょっとスムーズにボールが回る気がする

という部分です。
この指摘に対してここからは筆者の印象ですが、特に前半の方はサイドにボールが入った時にサイドの2人だけの関係になっているシーンが少なくないような印象を持ちました。もう1人、できればもう2人、前線とボランチが近い距離で絡みながらできればよかったなと感じました。
またそれに加えて感じたのは、判断というより選ぶ選択肢へのもどかしさです。
ワンタッチで前へ付ければチャンスになりそうなところで1つ持ったり、一旦落ち着けば展開できそうなところで急いでしまったりという、決して間違った選択をしているとは思わないのですが、まだあるはずのよりよい選択を選べていないように思えたのが、前半なかなか奪ってもスピードが上がりきらない、ヴェルディの切り替えの速さを上回れない理由として感じました。

最後に

平澤さんは「面白い試合」だったことや「(失点しても)仕切り直して強度を保ったまま追いつけたことは前進」ということを挙げつつ、その後に「1ポイントは悔やまれる」とも仰っていました。
こんなにダラダラ長文で書いといてなんですが、結局これに尽きるんですよね。勝ち切れなかったのがほんとうに悔しく、そして痛い引き分けでした。

この段階まで来て急に明日何かが飛躍的に向上したり、覚醒したりすることは普通考え難いですから、もう、今出来る最大限を出せるように、そしてそれを1%でも大きくしていけるように1つ1つやることが大事になってきます。

今年のリーグ戦、残りはいよいよ10試合です。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。

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